会社の休眠・みなし解散・清算(1)
コロナに起因し、このような経済情勢となってしまいました。
色々な模索する中で、選択肢の一つとして、事業の休業をお考えの方もいらっしゃるかと思います。
諸々の支払いを終え、従業員を解雇し、事務所や店舗を退去し、事業は停止します。
さて、残った会社はどうなるでしょうか。
まず、会社をそのまま、放置しておくとどうなるでしょうか?
(事業を休業したまま存続している会社は、一般に休眠会社といわれます。)
税務面では、法人税(国税)については、これまでと同様、申告書の提出と納税が必要です。
休業中であれば利益はなく、納税額はゼロかと思いますが、それでも決算書を作り、申告書を提出しなければなりません。
県民税・市民税(都民税)の申告書の提出も必要です。
県民税・市民税(都民税)の中には、均等割とよばれる、利益の額を問わず固定額を支払わなければならないものがあります。
均等割の金額は、資本金等や従業員数で変わってきます。
ミニマムで、愛知県名古屋市で71,000円、東京都で70,000円です。
ただ、均等割については、県や市、都に手続をすることで、免除を受けられることが多いです。
私の父親の会社が、現在、この免除を受けています。
よくよく考えると・・・・・17年間も続けて免除を受けていました。
当初は、電話で県と市に連絡し、簡単な書類を提出した記憶があります。
免除を受けてからは、県や市から県民税・市民税の申告書も届かなくなり、提出もしていません。
均等割を納めずに済む法律上の根拠は、次の通りです。
均等割の課税対象
・都道府県内に事務所又は事業所を有する法人(地方税法24条1項3号)
・市町村内に事務所又は事業所を有する法人(地方税法294条1項3号)
事務所又は事業所の定義
・自己の所有に属するものであるか否かにかかわらず、事業の必要から設けられた人的及び物的設備であって、そこで継続して事業が行われる場所
(地方税法の施行に関する取扱いについて)
休業すれば、上記の「場所」がなくなるので、「事務所又は事業所を有する」法人でなくなり、均等割を納める必要もなくなります。
さて、県民税・市民税の均等割の免除を受けたとしても、毎年、法人税(国税)の申告は必要です。
決算書を作り、申告期限(原則として決算日の2ヶ月後)までに申告せねばなりません。
休業中であれば仕訳もほぼゼロ、法人税申告書の作成も手間が掛からないため、記帳・決算と法人税申告書を税理士に依頼しても数万円で済むと思います。
さらに費用を抑えたいとなると、ご自身で作成されることになります。
休業中で利益、法人税は生じない状況ですので、少しのミスがあっても、お咎めはないだろうと思います。
さて、このまま時間が経過してゆきます。
すると、役員の任期が満了しますので、役員改選の登記が必要となります。
小規模な会社ですと、役員は取締役のみで、任期は10年としているケースが多いかと思います。
この場合には、任期満了もかなり後になるかもしれません。
そして、休業中ということで、結局、この登記もせず・・・・・
そうして放っておくと、みなし解散の対象になります。
みなし解散とは、
・12年間登記をしていない株式会社
・5年間登記をしていない一般社団法人・一般財団法人
を解散したものとみなす制度です。
ここで、「解散」とは、会社(法人格)を消滅させるための最初のステップと考えてください。
解散だけでは、会社(法人格)は消滅しないのですが、解散により会社は清算手続に入り、営業活動はできなくなります。
そして、清算手続の完了により、ようやく会社(法人格)が消滅します。
いわば、清算手続の入り口が解散です。
そして、「みなす」とは、どういうことでしょうか?
通常、解散は、株主総会の特別決議で決定する事項です。
そして、「みなす」とは、このような手続がされていなくても、法律上、解散したものと扱う、という意味です。
みなし解散に至る具体的な流れについては、令和元年の場合、次の通りとなっています。
・令和元年10月10日に次の内容の公告が官報にされます。
最後の登記をしてから12年を経過している株式会社、又は最後の登記をしてから5年を経過している一般社団法人若しくは一般財団法人は、事業を廃止していないときは、「まだ事業を廃止していない」旨の届出を管轄登記所にする必要がある。
公告の日から2ヶ月以内に(令和元年12月10日(火)までに)「まだ事業を廃止していない」旨の届出がなく、また、登記の申請もされないときは、令和元年12月11日付けで解散したものとみなされる。
(官報なんて普通は見ませんから気づきませんよね・・・・・)
・令和元年10月10日に、管轄登記所より休眠会社宛に、通知書(上記公告の内容と、「事業を廃止していない旨の届出書」のブランクフォーム)が発送されます。
この届出書に所定事項を記入し、令和元年12月10日までに管轄登記所に提出すれば、みなし解散は避けられます。
一方、この届出書を提出しない場合には、令和元年12月11日付けで解散となります。
なお、通知書が休眠会社に届いていなかったとしても、届出書を提出していなければ、令和元年12月11日付けで解散となります。
なお、このみなし解散ですが、(特例)有限会社には適用がありません。
私の父の会社について、いつこの通知が来るか、楽しみに待っていたのですが、さっぱり来ません。
登記簿謄本を取っても変わりなし。
何故? あ、そうか、父の会社、有限だった、とようやく気付きました・・・・・
さて、みなし解散に至ると、その後はどうなるのでしょうか?
清算手続なくして会社(法人格)は消滅するのでしょうか?
次回に続きます。