従業員持株会に加入できるグループ会社の範囲(孫会社、関連会社等)

ある企業グループが持株会を始めます。
親会社株が対象です。
企業グループには、子会社から孫会社、ひ孫会社、ひひ孫会社、ひひひ孫会社と、多くの会社があります。
関連会社も多数あります。
それで、これらグループ各社の従業員が無制限に持株会に入れるか、というと、そうではありません。

金商法の規制があるためです。

金商法には、集団投資スキーム持分という概念があります。
これは、平たくは、出資者の出資により事業がされ、事業収益が出資者に分配される場合の、出資者の権利です。
そして、集団投資スキーム持分は、金商法上、有価証券として扱われ、
出資を募るものには金融商品取引業者としての登録が必要、等の規制がなされます。
ファンドに似ているから、同じ規制をしよう、というわけです。

それで、従業員持株会の仕組みは、まさに集団投資スキーム持分の概念にぴったりです。
ただ、一定の要件を満たす従業員持株会(への出資者の権利)は、集団投資スキーム持分に当たらないとされています。

その要件の一つとして、その従業員が持株会に加入できる会社の範囲が決められています。
具体的には、持株会で売買される株式を発行している会社と、この会社の会社法上の子会社とされています。
金商法が改正され、2021年以降はこうなりました。
よって、これらの会社の従業員は持株会に加入できます。
一方、会社法上の子会社でない会社、例えば関連会社であるグループ会社の従業員は、持株会に加入できません。
加入すれば、持株会が集団投資スキーム持分になってしまいます。

それで、会社法上の子会社の定義は、ざっくりとは次の通りです。

1.親会社および他の子会社により議決権の過半数を所有されている会社

2.親会社および他の子会社により議決権の40%以上を所有されており、かつ、次にいずれかに該当する会社

イ 親会社および他の子会社と、親会社と同一の議決権行使をすると認められる者等により、議決権の過半数を所有されている
ロ 取締役の過半数が、親会社および他の子会社の役員・使用人等である
ハ その会社の重要な財務及び事業の方針の決定を、親会社および他の子会社が支配する契約等がある
ニ 親会社および他の子会社等から、資金調達総額のうち過半の融資を受けている
ホ その他、親会社および他の子会社がその会社の財務及び事業の方針決定を支配していると推測される事実がある

3.親会社および他の子会社と、親会社と同一の議決権行使をすると認められる者等により、議決権の過半数を所有されており、かつ、上記ロからホのいずれかに該当する会社

そして、上記の定義上、議決権所有者には「他の子会社」が含まれています。
よって、会社法上、子会社が議決権の過半数を所有する会社も子会社と定義されます。
その子会社が議決権の過半数を所有する会社も、また子会社と定義されます。
すなわち、孫会社からひ孫会社、ひひ孫会社、ひひひ孫会社、ひひひひ孫会社と、「ひ」がいくつ付こうとも、会社法上の子会社となります。

(ひ孫の次は玄孫(やしゃご)、来孫(らいそん)、昆孫(こんそん)、仍孫(じょうそん)、雲孫(うんそん)と続くそうですが・・・・・んまぁ)

ちなみに、2020年まではひひ孫会社は認められませんでした。
また、親子関係の判定は、議決権を過半数所持のみでされていました。

こちらは、非上場会社の持株会では、問題となることがほとんどない論点です。
おかげで金商法の改正が頭に入っておらず、あやうく2020年までの制度内容で回答してしまうところでした。
やはり条文確認は大切だなぁ、と痛感しました。

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