非上場会社の従業員持株会 - 持株会による借入とパススルー課税

 持株会に退会者が出たが、その株を買い取る資金が足りない。
 この場合、持株会が資金を借り入れ、株を買い取ることが考えられます。

 そうすると、持株会には、どの会員にもひも付かない、浮いた株が生じます。
 そして、この浮いた株にも配当がなされます。
 また、持株会外部で買い手が見つかれば、この浮いた株を売ることもあるでしょう。
 持株会株価より高く売れれば、売却益が生じます。

 これらの課税関係はどうなるでしょうか?

 理論上は、浮いた株への配当やその売却益を、各会員のこれまでの拠出額により、各会員に按分したものが、各会員の所得となると思われます。
 これに対して所得税等が課されます。

 根拠は、次の通りです。

所得税基本通達 
36・37 共―19
 任意組合等の組合員の当該任意組合等において営まれる事業(以下 36・37共―20 までにおいて「組合事業」という。)に係る利益の額又は損失の額は、当該任意組合等の利益の額又は損失の額のうち分配割合に応じて利益の分配を受けるべき金額又は損失を負担すべき金額とする。
 ただし、当該分配割合が各組合員の出資の状況、組合事業への寄与の状況などからみて経済的合理性を有していないと認められる場合には、この限りではない。

 (注)1 任意組合等とは、民法第 667 条第1項《組合契約》に規定する組合契約、投資事業有限責任組合契約に関する法律第3条第1項《投資事業有限責任組合契約》に規定する投資事業有限責任組合契約及び有限責任事業組合契約に関する法律第3条第1項《有限責任事業組合契約》に規定する有限責任事業組合契約により成立する組合並びに外国におけるこれらに類するものをいう。以下 36・37 共-20 までにおいて同じ。
 2 分配割合とは、組合契約に定める損益分配の割合又は民法第 674 条《組合員の損益分配の割合》、投資事業有限責任組合契約に関する法律第 16 条《民法の準用》及び有限責任事業組合契約に関する法律第 33 条《組合員の損益分配の割合》の規定による損益分配の割合をいう。以下 36・37 共-20 までにおいて同じ。

民法
(組合員の損益分配の割合)
第六百七十四条 当事者が損益分配の割合を定めなかったときは、その割合は、各組合員の出資の価額に応じて定める。
2 利益又は損失についてのみ分配の割合を定めたときは、その割合は、利益及び損失に共通であるものと推定する。

 ここで、「損益分配の割合」について、補足です。

 通常の配当の「損益分配の割合」は、組合契約(=従業員持株会規約)上、各会員の持株割合に拠ると定められています。
 具体的には、規約上、「会員の持分として登録された株式に掛かる配当金」といった文言があるかと思います。

 一方、浮いた株への配当については、規約上、「損益分配の割合」が定められていません。
 よって、上記の民法674条1項により、各会員の出資割合(=これまでの拠出額の割合)が「損益分配の割合」となります。

 浮いた株に対し、会員に課税されるのは、違和感があるかもしれません。
 しかし、所得があれば課税ありで、理にはかなっています。
 現実にこのような課税処分がされたケースはないようですが・・・・・。

 このような問題もあるため、持株会が直接借り入れをするのは、最期の手段としたいところです。

 なお、一時的なつなぎ資金の借入の場合でも、次の時系列だと、浮いた株への配当が生じます。

①持株会が借入し、退会者より株式を買い取り(浮いた株発生)
②配当基準日到来。浮いた株への配当が確定
③新たに拠出がなされ、拠出金により借入を返済

 私見ですが、このような場合、浮いた株へされた配当は、③の拠出をした会員に、その拠出割合に応じて配分してしまい、確定申告してもらった方が良いように思います。
 たまたま③の時期に拠出した会員が得をしてしまう点で、ちょっとおかしいような気もします。
 ただ、これをしないと、課税の問題が生じ、また、持株会に謎の資金が残ってしまうことになりますので。

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