非上場会社の従業員持株会の解散(廃止) - 借入金のある持株会の解散、自己株式取得とみなし配当
持株会に退会者が出たが、その株を買い取る資金が足りない。
仕方ないので、とりあえず自社から借入をしてやり過ごします。
新規会員を募集しますが、配当や奨励金が少額で、会員がなかなか集まりません。
退会者が続き、借入金でしのぎます。
先が見えません。
それで、いよいよ持株会の解散に踏み切ります。
持株会の持株の受皿を色々考えます。
しかし、どれも法務リスク・税務リスクがあります。
そこで、持株会株価で自社が買い取ろう、となります。
低い価格で買い取ると自社への受贈益課税のリスクがあるようだが、それ程大規模な持株会でもないし、そもそもリスクも少ないようだし・・・・・。
そこで、まずは、自社が持株会株価で買い取ることを考えます。
しかし、これでは、持株会の借入金全額を返すことができないのです。
何故か、といえば、自社株買いをする際には、みなし配当に源泉徴収が必要だからです。
(例)
オーナーが1株100円出資で会社を設立
→ 業績が好調で内部留保が増える
→ 持株会株価1,000円(固定)で持株会開始、オーナーが持株を持株会に売却
→ 持株会が自社から10百万円を借入れ、退会者から株式を10,000株取得
→ 持株会の持株全てを、自社が1,000円で買い取る
この場合、一株当たりみなし配当は900円 (1株当たり譲渡額1,000円 - 1株当たり資本金等100円)となります。
そして、一株当たり源泉徴収税額は、900円×20.42%となります。
すなわち、借入金10百万円で取得した株式10,000株の自社株買いの対価として、持株会に支払えるお金は、次の通りとなります。
10,000株×1,000円-10,000株×みなし配当900円×20.42%=8,162,200円
よって、1,837,800円の借入金が持株会に残ってしまいます。
さて、困ったな、となりまして、源泉徴収される分だけ高く買うという方向に行きます。
そして、上記の例ですと、買値をXとして、
X-(X-1株当たり資本金等100円)×0.2042=1,000円
という方程式を解きまして、1,231円で買い取れば源泉徴収後に1,000円が残る、よって借入金全額を返せるということになります。
なお、下記のコラムで触れたように、上記の例を前提とすれば、みなし配当のせいで、1,000円で買って1,000円で自社に売った会員にもみなし配当課税がされます。
従い、自己株式取得により持株会を解散させる場合には、持株会株価よりある程度高めの値段で買ってあげることが必要と思います。
さて、しかし、もう一つ、この借入金で取得した株式について、税務リスクが残っています。
この借入金と借入金で取得した株式は、法律上は持株会会員の共有となります。
ならば、借入金で取得した株式の自社への売却によるみなし配当所得は、理論上は、会員が出資割合に応じて申告すべきもの、なのです。
当局もなかなか突っ込んでこないだろう、とは思いますが・・・・・。
持株会の規模によっては、何十人、何百人に、会員からすれば訳の分からない修正申告させるのですから。
大抵の会員からすれば、そんな借入金は身に覚えのない話でしょうし。
そして、1,231円より高く買い取った場合には、もう一つ、問題が生じるのですが・・・・・。
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